書類の運搬時間はゼロに、承認・決裁処理は半日に短縮
紙に近い操作感で、職員が迷わず使えることが成功のカギ
鹿児島きもつき農業協同組合 様
経営企画部 企画広報課兼DX担当 大﨑 裕太郎氏
■業種
協同組合
■事業内容
指導事業、購買事業、販売事業(園芸農産・畜産)、信用事業(JAバンク)、
共済事業(JA共済)、生活関連事業ほか
■適用業務
稟議書・報告書などの承認・決裁処理
- 稟議書・報告書などの承認・決裁処理のために、毎日職員が40km離れた支所を往復していた
- 紙ベースの運用だと承認までに多大な時間がかかり、承認の進捗状況もわからなかった
- 書類を回覧するための運搬作業がなくなり、1日あたり職員1人分の業務負荷軽減が実現できた
- 2~3日かかっていた承認・決裁処理が約半日に短縮され、進捗状況も一目でわかるようになった
導入の背景
承認・決裁処理のために毎日40km離れた支所を往復
鹿児島きもつき農業協同組合
経営企画部 企画広報課兼DX担当
大﨑 裕太郎氏
JA鹿児島きもつきは、鹿屋市・垂水市・肝属郡の2市4町で事業を展開する農業協同組合。組合員の農家に対して営農支援を行う指導事業、肥料・農薬・飼料などの生産資材を安定供給する購買事業、農産物や畜産物を集出荷する販売事業、預金・融資・共済などを取り扱う信用・共済事業を幅広く展開している。2020年4月には、農と食と交流のテーマパーク「アグリパークかのや」を鹿屋市にオープン。「アグリパークかのや(愛称:どっ菜市場)」は、鹿児島県内で最大級の規模を誇る農畜産物直売所として、県内外からの多くの来客で賑わっている。
そんなJA鹿児島きもつきでは、「イノベーションに挑戦」のコンセプトのもと、業務のデジタル化を積極的に推進し、これまでにペーパーレス化やリモート会議の導入を進めてきた。そうした施策の一環として取り組んだのが、稟議書・報告書などの承認・決裁処理のデジタル化だった。
「JA鹿児島きもつきは事業エリアが広く、管内には合計12カ所の本所・支所があって、本所と最も遠い支所は40km以上も離れています。これまでは承認・決裁が必要な稟議書・報告書を回すために、職員が書類を毎日運搬していました。この書類の運搬に往復2日、本所の各部署で承認・決裁処理を行うのに最低1日かかっており、この期間を短縮することが求められていました。また事業領域が広範にわたるために書類の数が非常に多く、役員が出張すると書類が段ボール数箱分もたまってしまいます。書類のなかには急を要するものもあり、本所の総務人事課には各支所から進捗状況を尋ねる電話が頻繁にかかってきて業務に支障を来すこともありました」(経営企画部 企画広報課兼DX担当 大﨑 裕太郎氏)
こうした課題を解決するために、承認・決裁処理をデジタル化するワークフローシステムの導入を検討することにしたという。
「クラウド型のワークフローシステムを導入すれば、紙の稟議書・報告書をわざわざ運搬する必要がなくなり、出張先からでも承認・決裁処理が行えるようになるほか、書類がどこにあるのか進捗状況も把握できるので、総務人事課の業務負荷も軽減できると考えました」(大﨑氏)
導入のポイント
紙ベースの運用に近い操作性と承認・決裁ルート設定の容易さを評価
JA鹿児島きもつきがワークフローシステムの導入に向けた検討に着手したのは、2021年春のことだった。
「まずは、比較サイトからワークフローシステムの資料をダウンロードし、資料ベースで導入候補を比較しました。組合にはパソコンの操作に不慣れな職員も少なくないので、紙の書類に印鑑を押すという従来に近い運用が可能かどうかを念頭に置き、検討を進めました。また、運用管理の面から複雑な承認・決裁ルートでも設定しやすいものを選定することにし、同時にコスト比較も行いました」(大﨑氏)
このような比較検討の結果、JA鹿児島きもつきが選定したのが「Create!Webフロー Cloud」だった。
「Create!Webフロー Cloudを選んだ一番の決め手は、職員が迷わず操作できる使い勝手が最も優れていると感じたことです。稟議書・報告書を作成するときにどこに文章を書けばよいか、承認・決裁処理を行うときにどこに押印すればよいかが、従来の紙書類と同じようにすぐに分かります。運用管理を担当する私たちにとっても、再現性の高い書類が作成しやすく、複雑な承認・決裁ルートも簡単に設定できます。クラウドサービスとして提供されているため、出張先などリモートでも処理が行え、初期費用がかからないサブスクリプション型で利用できるというコストメリットがあります。このように私たちが求めていたすべての要件をクリアしていたことから、Create!Webフロー Cloudを導入することに決めました」(大﨑氏)
こうして2021年11月、JA鹿児島きもつきはCreate!Webフロー Cloudを正式に採用。当初は20ユーザーライセンスを契約し、本所内で試験的に運用を開始した。同時に決裁済みの書類を保管・蓄積・検索できるようにするために、書類をPDF・CSV形式で出力できる「決裁データ出力オプション」も導入した。その後、2022年4月から全職員を対象に約500ユーザーがCreate!Webフロー Cloudを利用している。
「現在、稟議書をはじめ支出関係の報告書などの承認・決裁処理はすべてCreate!Webフロー Cloudを利用しています。また、総務人事課に提出する手当関係の申請書、管理DX課に提出するICカード作成申請書などにも使っています。Create!Webフロー Cloud上で作成した書類の数は200種類近くに上ります。ルート設定は、各部署の担当者と入念に打ち合わせながら進めました」(大﨑氏)
■ Create!Webフローによる申請・承認業務の電子化のイメージ
導入の効果
回覧の負担軽減やペーパーレス化を実現
デジタル化のモデルケースとして 県内のJAからも注目の的に
Create!Webフロー Cloudの運用開始から2年近くが経過し、JA鹿児島きもつきではさまざまな導入効果を実感しているという。
「これまで2~3日かかっていた承認・決裁処理の時間が、早ければ半日で済むようになりました。また書類を回覧するために総務人事課の職員が各部署を回るという作業がなくなり、1日あたり1人分の業務負荷軽減が実現できました。このほか紙書類をデジタル化したことにより、紙の消費量も削減できています。実際に計測したわけではありませんが、稟議書・報告書だけでも年間約1万件の処理があるので、添付資料と合わせると数万枚の紙を削減できたと考えています」(大﨑氏)
Create!Webフロー Cloudを利用する職員からの反応も好評だ。
「職員からは、書類がどこにあるのか一目で分かるようになり、承認・決裁処理の時間が短縮されたことを喜ぶ声が多数寄せられています。書類が紛失しなくなったという意見もありました。役員も混乱することなくスムーズに利用できており、非常に高く評価されています」(大﨑氏)
JA鹿児島きもつきがCreate!Webフロー Cloudの導入によって実現したワークフローシステムの評判は瞬く間に広まり、現在は鹿児島県内の他のJAが続々と見学に訪れているそうだ。
今後の展望
全拠点へのワークフロー適用を検討 運用担当の後進育成にも注力
今後JA鹿児島きもつきでは、本所・支所以外の拠点に勤務する職員にも適用範囲を広げていく予定だ。
「拠点のなかにはインターネット環境のない農場もあるため、紙書類によるやりとりも残っています。まずはインフラを整備したのちに、ワークフローシステムの運用を開始しようと考えています」(大﨑氏)
ワークフローシステムの運用管理を担当する人材育成にも注力する方針だという。
「現在は私を中心に少人数で運用管理を担当していますが、将来の安定的なシステム運用を見据え、今後は後進の人材を育てていきたいと考えています」(大﨑氏)
今回のJA鹿児島きもつきの取り組みは、多数の事業拠点を構える企業・組織がワークフローシステムの導入によってデジタル化を推進していく際に、大いに参考になる事例と言えるだろう。
※取材 2023年12月
※記載の担当部署は、取材時の組織名です。