新規株式上場を見据え紙ベースの承認・決裁プロセスを改善
内部統制の強化と承認スピードの大幅な向上を実現
AOSデータ株式会社 様

管理本部 本部長 兼 オンライン事業部 事業部長 野田 武志氏(写真)
管理本部 オンライン事業部 販売促進担当リーダー 加藤 恭子氏(取材協力)
■業種
情報サービス業
■事業内容
クラウドデータ事業、システムデータ事業、データ復旧事業、
リーガルデータ事業、AIデータ事業ほか
■適用業務
稟議書、購買申請書、支払申請書、出張申請書、PC持ち出し
申請書、得意先登録/変更依頼書ほか
- 承認・決裁プロセスが紙ベースであり、なおかつ一部の処理業務については運用手法が定まっていない
- 従来の運用を大きく変えてしまうと業務負担が増す可能性があり、社内から反発される恐れがあった
- ワークフロー化により煩雑だった承認・決裁業務の流れが整い、内部統制強化と業務スピード向上を実現
- 既存の紙イメージを再現したまま承認・決裁業務を回せるほか、マニュアルがなくても操作できるように
導入の背景
紙ベースでの煩雑な承認・決裁業務。IPOを見据え内部統制強化が急務に
AOSデータは、顧客データの安全な保管とデジタル資産の活用・管理を支援するデータアセットマネジメントサービス事業を展開する企業。法人・個人のデータ資産を保管するクラウドバックアップサービス「AOSBOX」をはじめ、PCのデータ・設定・ソフトを移行する「ファイナルパソコン引越し」、トラブル発生時にデータを復旧・復元する「ファイナルデータ」、データを復元できないように抹消・廃棄する「ターミネータ」など、データのライフサイクルに合わせた様々な製品・サービスを提供している。
2020年にはグループ会社のリーガルテックからリーガルデータ事業を継承し、証拠データの復元調査や保全を行うデジタルフォレンジック等「リーガルデータサービス」の提供を開始。これらの製品・サービスで培ってきたデータ管理技術のノウハウを活かし、高精度・高品質な機械学習を支援する「AIデータアノテーションサービス」にも力を入れている。
こうした先進的なデータアセットマネジメントサービスを提供するAOSデータだが、社内の業務プロセスには課題もあった。その一つが、紙ベースで運用していた各種申請書・稟議書の承認・決裁プロセスだ。当時の課題について管理本部 本部長の野田 武志氏は、以下のように話す。
「当社では従来、紙の申請書・稟議書フォーマットを使って申請業務を行っていました。さらに、一部の申請・承認処理はメールやSNS、口頭で行われており、承認プロセスが明確でなく記録も残らないなど、内部統制の面で懸念もありました。新規株式上場(IPO)を目指す当社としては、これらの課題を解決して内部統制強化を図ることが急務でした」
そこでAOSデータでは、管理本部の主導により、承認・決裁プロセスをワークフローシステム化する取り組みに着手することにした。
導入のポイント
既存の紙イメージを踏襲したUI、 直感的に使える操作性が採用の決め手

AOSデータ株式会社
管理本部 本部長 兼
オンライン事業部
事業部長
野田 武志氏
AOSデータが導入候補のワークフローシステムを実際に試用したのは、2019年5月のこと。トライアルを実施するにあたって同社が重視したのは、既存の紙ベースのフォーマットに近いイメージの申請書・稟議書を作成できることだった。
「内部統制強化を目的とした承認・決裁プロセスの電子化ですが、実際に申請・承認を行う社員にとっては、紙ベースとは異なる新しい運用を覚える必要がありますし、それを負担と感じる社員からの抵抗や反発も危惧されました。そこで出来る限りその負担を軽減するために、既存の紙イメージを違和感なく再現できるシステムを選ぶことにしました。また、ワークフローシステムを利用するのに学習が必要だと、導入しても使われない恐れがあるため、マニュアルがなくても直感的に操作できることも重視しました」(野田氏)
トライアルの結果、AOSデータが選定したのが、インフォテックのワークフローシステム「Create!Webフロー Cloud」だった。トライアルを実施した管理本部 オンライン事業部 販売推進担当リーダーの加藤 恭子氏は、選定の決め手を次のように説明する。
「既存の紙の申請書・稟議書をそのまま電子化して使えるかどうかを検証したところ、他製品では申請画面のインターフェイスが大きく変わってしまうのに対し、Create!Webフロー Cloudの申請画面は紙イメージとほぼ同じです。承認ルートもビジュアルで確認できるので、これならば違和感なく導入できると判断しました」(加藤氏)
導入の効果
内部統制強化と業務の高速化を実現。「ハンコ出社」回避の思わぬ効果も
AOSデータがCreate!Webフロー Cloudを正式契約したのは、トライアルからわずか1か月後の2019年6月。申請書・稟議書を利用する機会の多い営業部を中心とした15ユーザーからのスモールスタートで試験的に運用することにし、加藤氏がライセンス関連の申請書や購買申請書などの申請画面のフォーム作成を担当した。
「まずは営業部に導入して問題なく運用できるかを検証しました。導入当初はシステム化への不満の声もありましたが、簡単な操作資料を用意しただけで全員が使いこなせるようになり、内部統制強化の重要性に対する理解も進んでいったことから、全社導入が可能である確信が持てました」(野田氏)
AOSデータでは、2019年10月に全社導入を完了し、その後も会社の成長に合わせて段階的にユーザーライセンスを追加。支払・出張・PC持ち出し・得意先の登録/変更といった申請書や稟議書へと順次適用範囲を広げていった。また、Create!Webフロー Cloudが使われるようになったことで、様々な効果を実感していると野田氏はいう。
「一番の導入効果は、やはり内部統制強化を実現できたことです。物品購入や支払依頼をワークフロー化したことで、誰がいつ何を購入していくら支払ったのか、履歴を見える化することができました。決裁文書を部署・役職など決められた範囲で共有できるようになったことも内部統制強化につながっています。また、従来の紙ベースでの承認・決裁業務では、一連のプロセスが終了するまで平均1~2日ほどかかっていましたが、それが数時間単位で終わるようになるなど承認スピードが大幅に向上しました。また書類の提出漏れや承認の遅れが格段に減ったという声も上がっています」
また導入当初は想定していなかった効果として、コロナ禍でのBCP対策が挙げられる。
「紙ベースの運用とは違い、ワークフローシステムがクラウド上にあるため、コロナ禍によって在宅勤務・テレワークを実施した際にもハンコを押すためだけに出社しなくてもよくなったのは、予想外の大きな導入効果でした」(加藤氏)
今後の展望
完全ペーパーレス化を目指し、利用範囲のさらなる拡大を検討
Create!Webフロー Cloudの運用が軌道に乗りつつあるAOSデータだが、現在では運用中のフォームの見直しも始めているという。
「これまでは紙ベースの書類イメージをそのまま電子化することを優先しましたが、Create!Webフロー Cloudには申請フォームにPDFファイルを貼り付けることのできる機能があります。これを有効活用し、支払申請書に取引先からの請求書を貼り付けて、一つの申請書内で一気に請求金額の確認までが可能なフォームに改良してリリースし始めています」(加藤氏)
さらに今後は、Create!Webフロー Cloudを使った申請・承認ワークフローを増やしていく方針だという。
「社内にはまだまだ紙ベースで運用している書類が残っています。社長からはさらに書類の電子化を進め、完全ペーパーレス化を達成せよという指示が出ていることもあり、それを実現するために、さらに利用範囲を拡大していきたいと考えています」(野田氏)
■ AOSデータが描く、完全ペーパーレス化までのロードマップ
※取材 2021年3月
※記載の担当部署は、取材時の組織名です。